冬は鍋料理
温かいですし、家族皆で楽しめるので、食卓に上ることも多いと思います。
日本にはいろいろな鍋料理がありますが、ご馳走鍋の筆頭は「すき焼き」でしょうか。
和牛を贅沢にいただく日本ならではの料理です。
今日は「すき焼き」について、お話しようと思います。
すき焼きの歴史 日本の冬のご馳走料理の起源は?
すき焼きは、今や日本の冬に欠かせない家庭料理ですが、その歴史を辿りますと意外な発見があるかもしれません。
起源は江戸時代後期、当時の食文化や社会情勢に深く根ざしていると言われています。
江戸時代では牛肉を食べる文化が一般的ではありませんでした。
しかし、海外との交流が増えるにつれて、徐々に肉食文化が日本にも広がり始めます。
すき焼きの原型は、農家の人々が鍬(すき)を使って野菜や肉を焼いて食べていたことから名付けられたという説が有力ですが、ほんとにそんなことができたのかなと、個人的には疑問に思っています。
このような「すき焼き」ですが、やがて明治時代に入り、牛肉を使った料理として進化を遂げました。
明治維新後、西洋文化の流入によって牛肉がより広く受け入れられるようになりました。
「文明開化」と称して、肉を食べることが上流社会のブームになったのです。
鉄鍋で煮たり焼いたりしながら食べるスタイルは、宴会や家族の団らんにピッタリの料理として重宝され、庶民にも広まっていきました。
この頃、関東風と関西風の調理スタイルの違いも生まれたと言われています。
すき焼きの歴史は、単なる料理の枠を超え、日本の近代化や文化の変遷を映し出しています。
まぁうんちくはこのぐらいにして、具体的な話に移りましょう。
すき焼きの基本具材と選び方
すき焼きの魅力の一つは、豊富な具材の組み合わせです。
シンプルな食材が多いのですが、それぞれの選び方や質によって、味わいが大きく変わってきます。
以下に定番の具材と選び方のポイントをご紹介します。
肉
すき焼きの肉の定番は牛肉です。
好みによって鶏や豚を使うこともありますが、基本は牛肉。
適度な霜降りが入った肉を選ぶますと、割り下と絡んだ時にとろけるような味わいが楽しめます。
おすすめは、国産和牛の肩ロースやリブロース肉の薄切りです。
すき焼き用としてカットしたものも売られていますよね。
また、関西では肉を最初に焼くスタイルが多いため、焼きに適した厚さを選ぶのもポイントです。
ネギ(長ネギまたは青ネギ)
ネギは甘みを引き出す重要な野菜です。
関東では長ネギ、関西では青ネギを使うことが多いようです。
それぞれの地方の好みに合わせて選びましょう。
しっかりと焼き目をつけると香ばしさが増し、すき焼き全体の風味を引き立ててくれます。
豆腐
豆腐は絹ごしよりも木綿豆腐を選ぶのが一般的です。
私は焼き豆腐派です。
煮崩れしにくく、割り下をしっかり吸収して味が染みやすいのが特徴。
美味しいですよね。
しらたき(または糸こんにゃく)
しらたきは牛肉と一緒に煮ると肉が硬くなると言われるため、少し離れた場所に置いて煮込むのが良いとされています。
低カロリーで食物繊維が豊富な点も嬉しいポイント。
なにより、いろいろな具材から出る旨味の汁を吸って、得も言われぬ美味しさを堪能できます。
野菜類(白菜、春菊、椎茸など)
白菜は甘みが増す冬が旬。
芯に近い部分を使うと、より甘みが引き立ちます。
春菊は爽やかな香りで、全体の味を引き締める役割を果たします。
椎茸や舞茸などのキノコ類は、旨味を追加する万能食材ですね。
ポリフェノールがあり、体にもいいです。
普段白菜を食べたがらないお子さんでも、すき焼きの白菜だけは食べられるということもあるようです。
その他(卵、麩、餅など)
最後に、卵は必須アイテムです。
溶いた卵に肉や野菜を絡めると、まろやかさが増します。
生卵は食べない諸国が多い中、日本では伝統的に新鮮な生卵を食する習慣があります。
煮えた具材を溶いた生卵に絡めて食べるというのは、日本ならではの発想と感じています。
尚、地方によっては麩や餅を加えてアレンジすることもあるようです。
我が家では、最後の〆にうどんを入れて「うどんすき」にしていただきます。
これがまた美味しい!
具材の選び方のコツ
新鮮な具材を選ぶのが何よりも重要です。
野菜は色鮮やかでみずみずしいものを選び、牛肉は購入前に脂の入り方や鮮度をチェックしましょう。
また、季節の具材を取り入れると、さらに味わい深いすき焼きとなります。
具材を色々上げましたが、我が家流を作るのも良いと思います。
子どもの好きな具材を入れ楽しくいただくと、笑顔の団欒となることでしょう。
牛肉がベストと言われますが、中には牛は苦手という方もいますよね。
また、経済的な理由で「豚で」ということもアリです。
豚肉はコクがありますし、ビタミンもたくさん含んでいますので、栄養価の高い肉。
「豚すき」もおすすめです。
すき焼きのタレ(割り下)の作り方と黄金比
すき焼きの味を左右する割り下。
自分で作れば好みの甘さや濃さに調整できるのが魅力です。
ここでは基本の割り下のレシピと、黄金比についてお話します。
基本の材料
割り下の基本材料は以下になります。
- 醤油:100ml
- 砂糖:大さじ3(甘めが好みなら大さじ4)
- みりん:100ml
- 酒:100ml
- 水:50ml
黄金比の基本は?
割り下作りの基本は、醤油・みりん・酒を「1:1:1」で混ぜること。
これに砂糖で甘さを調整するのが一般的な比率です。
好みによって水を少し加えることで、全体の味を軽くすることもできます。
作り方の手順
- 鍋に醤油、砂糖、みりん、酒、水を入れます。
- 中火で加熱しながら、砂糖が完全に溶けるまで混ぜます。
- 一煮立ちさせたら火を止めて冷まします。
冷ますことで味が落ち着き、さらに具材にしっかり絡む割り下が完成しますよ。
市販のタレとの違い
市販のすき焼きのタレも手軽で便利です。
でも、自家製の割り下は添加物が少なく、甘さ控えめや濃い味への調整など、好みの味にカスタマイズできるのが大きな利点と思います。
アレンジのポイント
- 濃いめがお好みの人:醤油を10%増やし、砂糖を少し減らす。
- 甘めがお好みの人:みりんを増やし、砂糖を多めにする。
- コクを加えたい人:だし昆布や鰹節を少量加えると旨味が増す。
市販のすき焼きのたれのおすすめは
1.明治28年創業 人形町老舗すき焼き店「今半」の割り下
価格はお高めですが厳選素材で甘すぎず、お肉を美味しくいただける味です。
2. 創味食品 すき焼きのたれ
花鰹仕立てでまろやか。化学調味料不使用で後口が良い。すき焼き以外にもいろいろ使えるのが特徴です。
3.ヤマモリ すき焼きのたれ
低糖質・低カロリーで糖質制限をしている方のためのすき焼きのたれです。
ダイエット中の方にもおすすめ。
関東風と関西風のすき焼きの違い
すき焼きは日本全国で親しまれている料理ですが、地域によって調理方法や味付けが異なるのが特徴です。
特に関東風と関西風の違いは、食文化や歴史の影響を色濃く反映していると思います。
関東風…割り下を使うスタイル
関東風すき焼きでは、初めに割り下を鍋に注ぎ、その中で具材を煮込むスタイルが一般的です。
この方法は、江戸時代から明治時代にかけて、醤油や砂糖を使った甘辛い味付けが発展したことで生まれたと言われています。
割り下を事前に作るため、味が均一で、具材一つひとつにしっかりと味が染み込むのが特徴となっています。
関西風…肉を焼くスタイル
一方、関西風すき焼きでは、まず鉄鍋に牛脂を溶かし、牛肉を直接焼くことから始めます。
そして、砂糖や醤油をその場で肉に振りかけながら味付けをするのです。
この方法では、割り下を作らずに具材の味を引き出す調理が重視されるため、牛肉本来の旨味がダイレクトに楽しめるのが特徴だ。
関東・関西の具材の違い
使われる具材自体は大きな違いはありません。
ただ、ネギの種類やその切り方に多少地域差があります。
関東では長ネギが好まれる一方、関西では青ネギ(九条ネギなど)が使われることが多いのです。
また、春菊やしらたきの使用頻度も地域によって異なるようです。
関東風・関西風のどちらが主流?
近年では、家庭で関東風の割り下を使う人が多いようですが、関西風のシンプルで素材の味を楽しむスタイルも根強い人気があります。
どちらが主流というよりは、その時の気分によって使い分け、両方を楽しむ方が良いのかなと思います。
それぞれの魅力を理解し、自分好みのスタイルを見つけるのもすき焼きの楽しみ方の一つですよね。
美味しいすき焼きを作るためのポイント
すき焼きをさらに美味しく仕上げるには、具材の準備や調理のタイミング、食べ方にちょっとした工夫を加えることが大切です。
ここでは、家庭ですぐに実践できるコツをいくつか紹介しますね。
牛肉は一度に焼かない
牛肉を最初に焼く関西風スタイルの場合でも、一度に全て焼かず、食べる分だけを少しずつ調理するのがおすすめです。
これにより、肉が硬くなるのを防ぎ、ジューシーな食感を楽しめます。
割り下を使う場合も、適量を入れ、煮込みすぎないよう注意しましょう。
具材は順番が命
火の通りやすさを考えて、具材を鍋に入れる順番を工夫すると良いです。
まず肉や長ネギを焼き、その後に豆腐やしらたきを追加。
白菜や春菊などの野菜は煮崩れしにくいタイミングで加えると、見た目も美しく仕上がる。
ただ、白菜は芯に近い部分や葉の部分で火の通りが違いますので、柔らかい方をお好みの場合は、早めに入れても良いと思います。
割り下の量を調整
関東風では割り下を使います。
また、関西風でも肉を焼いた後の野菜を煮る場合には割り下を足すことがあります。
割り下は一度に全て注がず、具材の量や好みに応じて少しずつ足していくのがポイントです。
煮詰まりすぎると味が濃くなりすぎるため、途中で水(または出汁)を足して調整するのも忘れずに。
卵の使い方でまろやかさをプラス
溶き卵を用意する際、少量の出汁や割り下を混ぜるとよりまろやかでコクのある味わいになります。
卵が苦手な人は、ポン酢やゴマだれを代わりに使ってアレンジしても良いですが、割り下で味が整っていますから、そのままいただいても十分美味しいと思います。
ちなみに私の夫は溶き卵が苦手なので、卵に絡めずそのままいただいています。
残りのすき焼きをアレンジ
食べ終わった後の割り下にうどんやご飯を入れると、締め料理として最高の一品が楽しめます。
ご飯を加える場合は、溶き卵と一緒に煮込むと絶品です。
家族や友人と鍋を囲みながら、これらのポイントを意識して作りますと、すき焼きがさらに美味しくなるかと思います。
すき焼き鍋の選び方と特徴
すき焼きを美味しく楽しむためには、鍋そのものにもこだわりたいものです。
鍋の素材や形状によって、火の通り方や味わいが変わるため、選び方を知っておくと一層美味しいすき焼きが楽しめると思います。
鉄鍋の魅力
すき焼きといえば「鉄鍋」が定番です。
厚みがある鉄鍋は熱を均一に伝えるため、具材全体にムラなく火が通るのが特徴。
肉を焼く際も、程よい焼き目がついて香ばしさを引き立ててくれます。
さらに、保温性が高く、最後まで熱々のすき焼きを楽しめる点が魅力ですね。
鉄なので、IHヒーターでも使えます。
我が家ではテーブルにIHヒーターを置き、鉄鍋を載せて美味しくいただいています。
土鍋の活用
土鍋は柔らかい火通りが特徴で、素材の旨味をじっくり引き出すのに適しています。
割り下をたっぷりと使い、煮込み料理のように仕上げる関東風スタイルには特におすすめです。
ただし、鉄鍋に比べて直火や高温には弱い点に注意が必要です。
また、そのままではIHヒーターには使えません。
中にステンレスプレートが入っているIHヒーター用の土鍋を求めましょう。
フッ素加工の鍋
現代の家庭では、扱いやすいフッ素加工の鍋も人気です。
焦げ付きにくく、手入れが簡単なため初心者にもおすすめです。
鉄鍋や土鍋より安価で求めることができますし、IH対応なのも嬉しいです。
ただし、熱伝導が鉄鍋よりもやや劣るため、中火~弱火を心がけ、火加減を調整しながら調理すると良いです。
また、空焚きしますと加工が傷みやすいので、注意して使います。
鍋の大きさと深さ
鍋の大きさは、人数に応じて選ぶのが基本です。
2~3人用なら直径25cm程度、4~6人用なら直径28~30cm以上のものが目安。
深さは、割り下がたっぷり入る鍋の方が具材の煮込みがしやすく、見た目も美しく仕上がるように思います。
お手入れのポイント
鉄鍋のお手入れは難しく考えがちですが、意外に簡単です。
たわし(亀の子たわしのようなもの)を用意し、使用後は温水の流水で流しながらこすり洗いします。
その後しっかり乾燥させるのですが、空焚きして水分を飛ばすのが一番簡単です。
薄く油を塗って錆を防ぐと書いてある書があるかもしれませんが、不要です。
むしろ油が酸化して、次回の使用時に落ちにくくなり手間がかかることも。
鉄は錆びやすいのですが、水分がなければ錆びないので、中華鍋でもすき焼き鍋でも、この方法で十分です。
ただ、保管場所に水滴が落ちる可能性がある場合などは、この限りではありません。
土鍋は洗剤を使いすぎず丁寧に洗い、キッチンペーパーなどで水分をぬぐった後、自然乾燥させると長持ちします。
丁寧に洗いませんと壊れやすいので気を付けましょう。
フッ素加工の鍋は、フライパンと似たような取り扱いで良いです。
金属製の調理器具やたわしを避けて、表面を傷つけないように気をつけましょう。
鍋選びはすき焼きの味に直結する重要なポイントです。
家庭の環境や調理スタイルに合わせて、自分に合った鍋を選びましょう。
鉄鍋や土鍋は一度購入しますと何十年も使うことができます。
すこしお高いですが、うちの鉄鍋は親から譲り受けたので、もう50年以上経過していますが、いまだにしっかり使えますから、親に感謝というところです。
まとめ 日本の冬の食卓に欠かせない「すき焼き」の魅力
すき焼きは、日本の冬を象徴する心温まるご馳走です。
その歴史は江戸時代後期に始まり、明治時代に大きく進化しました。
関東風と関西風という地域ごとの調理スタイルの違いも、この料理の奥深さを感じさせてくれます。
具材選びや割り下の作り方、鍋の選び方に少しの工夫を加えるだけで、家庭のすき焼きがさらに美味しく、特別なものに仕上がることを感じていただけたでしょうか。
牛肉や新鮮な野菜の旨味を引き立てる調理法や、最後の一口まで楽しむための締め料理など、すき焼きの楽しみ方は様々です。
冬の寒い日に家族や友人と鍋を囲み、温かな時間を共有する。
その中心にすき焼きがあることで、料理が生む喜びを改めて感じることができるのではと思います。
この記事が参考になったら嬉しいです。
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