百貨店と言わずスーパーと言わず、夏に必ずやるキャンペーンが「土用の丑の日のウナギ」です。
土用の丑の日は、日本の夏の風物詩として知られ、多くの人々に親しまれています。
この特別な日は、ウナギを食べることで知られており、暑い夏を乗り切るためのスタミナ源とされています。
ウナギは高級食材ですから、普段はあまり食べる機会のない人でも、土用の丑の日だけは頂く場合があるのでは?
でも、土用の丑の日がなぜウナギと結びついているのか、その由来や背景について詳しく知っている人は少ないかもしれません。
今日は土用の丑の日のウナギについて書いてみようと思います。
土用の丑の日の由来や意味について、ウナギの栄養価や効能、今年(2024年)の土用の丑の日はいつになるのか、そしておすすめのウナギ料理についてもご紹介しますね。
土用とは
まず、土用についてお話します。
土曜日ではなく、土用です(笑)
土用とは、季節の変わり目を指す言葉で、年間に四回訪れる特定の期間のことを言います。
この期間は、立春、立夏、立秋、立冬の前の約18日間を指し、それぞれ「春の土用」「夏の土用」「秋の土用」「冬の土用」と呼ばれます。
日本では特に「夏の土用」が有名で、その期間中に暑さがピークに達するとされています。
土用という言葉の由来は、中国の五行説に基づいています。
五行説は、木・火・土・金・水の五つの元素が万物を構成するとする考え方です。
この中で「土」は季節の変わり目にあたり、季節と季節の間を調整する役割を持つとされます。
したがって、土用は季節の変わり目を意味し、次の季節への準備期間として位置づけられています。
土用の期間中は、農作業や建築作業などの大きな動きを避けるべきとされてきました。
これは、土用が季節の変わり目であり、気候や体調の変化が激しい時期であるためです。
また、土用の期間中に体調を整え、次の季節に備えるために、特定の食べ物を摂る習慣が生まれました。
その代表的なものが、夏の土用に食べるウナギです。
土用の丑の日の由来
先に述べたように、土用の丑の日は、夏の土用の期間中に訪れる丑の日を指します。
丑の日とは、十二支の「丑(うし)」に当たる日であり、土用の期間中に一度または二度訪れることがあります。
この日にウナギを食べる習慣は、江戸時代に始まったと言われています。
この習慣の由来にはいくつかの説がありますが、最も有名なのは平賀源内の逸話です。
江戸時代の博学者であった平賀源内は、友人のウナギ屋から「夏にウナギが売れないので何とかしたい」と相談を受けました。
そこで源内は、「本日丑の日」という看板を店先に掲げることを提案しました。
このアイデアが功を奏し、店は大繁盛。
その後、他のウナギ屋も同様に看板を掲げるようになり、土用の丑の日にウナギを食べる習慣が広まりました。
今流に言いますと、抜群のキャッチコピーで流行を生み出したコピーライターみたいですね。
もちろん、理由があるのです。
ウナギは栄養価が高く、夏バテ防止に効果的とされていました。
特に暑い夏には、体力を補うためにスタミナ食が求められており、ウナギがその役割を果たしていました。
このため、土用の丑の日にウナギを食べることが健康維持に良いとされ、習慣として定着したのです。
さらに、古代の中国では、丑の日に「う」のつく食べ物を食べると病気にならないという信仰がありました。
この信仰も影響し、土用の丑の日に「う」のつくウナギを食べる習慣が根付いたと考えられています。
ウナギの効能
ウナギは、その豊富な栄養価と健康効果で知られています。
特に夏バテ対策として重宝されてきましたが、具体的にどのような効能があるのでしょうか。
成分から追ってみましょう。
- カロリー: 100gあたり約228kcal
- タンパク質: 100gあたり約17.1g
- 脂質: 100gあたり約19.3g
- 炭水化物: 100gあたり約0.3g
- ビタミンとミネラル: ウナギにはビタミンA、B1、B2、D、E、カルシウムなどが含まれています。
- n-3系多価不飽和脂肪酸: EPAやDHAなどが豊富に含まれています。
実際それはどのように体に働きかけるのでしょう。
タンパク質
タンパク質は筋肉の修復や成長を助けるため、運動後や疲労が溜まった時に摂取するのが理想的です。
抜け毛、免疫力強化、筋肉疲労などに効果があります。
タンパク質はアミノ酸で構成されています。
体が疲れた時などに、代謝を高める意味でアミノ酸系サプリを摂ることがありますよね。
何とウナギのアミノ酸スコアは97で、かなりバランス良くアミノ酸を摂取できます。
夏バテに効果があるといわれるのもわかります。
ビタミン
- ビタミンA 夜盲症や視力の低下防止、皮膚や粘膜を正常に保つ効果があります。
- ビタミンB群 ビタミンB1は炭水化物の代謝を助け、エネルギーを効率よく生成するため、疲労回復に効果的です。白米や白砂糖など精製度の高い食品や、糖質の多い食品、アルコールの摂取が多い人ではビタミンB1が不足しがちですから、しっかりとることで夏バテのような疲労にも働きかけます。ビタミンB2は皮膚や粘膜の健康維持に重要であり、美容効果も期待できます。ビタミンB群は水溶性ビタミンなので、多く摂取しても排泄されます。過剰摂取の心配はありません。これらのビタミンは体内のエネルギー代謝をサポートし、全体的な健康状態を向上させます
オメガ3脂肪酸
ウナギにはまた、DHAやEPAといったオメガ3脂肪酸が含まれています。
これらの脂肪酸は、血液の流れを良くし、心血管系の健康を保つ働きがあります。
また、脳の機能向上や認知症予防にも効果があるとされています。
このように、ウナギは栄養豊富で、夏バテ防止や健康維持に非常に効果的な食材です。
特に暑い季節には、積極的に摂取することで体調を整え、元気に過ごすことができます。
今年の土用の丑の日はいつ
毎年、土用の丑の日は異なる日付に設定されるため、その年ごとに確認が必要です。
2024年の夏の土用の期間は7月19日から8月6日までで、この期間中の丑の日が土用の丑の日とされます。
今年(2024年)の土用の丑の日は、7月23日(火)と8月4日(日)の二回あります。
土用の丑の日は、十二支の「丑(うし)」に当たる日であり、夏の土用の期間中に一度または二度訪れることがあります。
そのため、年によっては一回の年もあれば、二回の年もあります。2024年は二回訪れる年です。
土用の丑の日が二回ある年は、「一の丑」と「二の丑」と呼ばれます。
両日ともにウナギを食べる習慣があります。
7月から8月にかけては特に夏バテが心配される時期になります。
スタミナをつけるために、土用にこだわらずとも、ウナギを食べるといいですね。
また、今後3年の土用の丑の日もは以下になります。
2025年・・・7月19日、7月31日
2026年・・・7月26日
2027年・・・7月21日、8月2日
その日に合わせてウナギを食べ、伝統を守りながら健康維持をするのも良いのかなと思います。
おすすめウナギ料理
土用の丑の日には、さまざまなウナギ料理を楽しむことができます。
ここでは、伝統的なウナギ料理から家庭で作れる簡単レシピ、そしてレストランのおすすめメニューを紹介します。
伝統的なウナギ料理
古来からある伝統的なウナギ料理をご紹介します。
うな重・うな丼
まず、ウナギ料理の代表格と言えば「うな重」です。
「うな丼」も人気の料理です。うな重と似ていますが、重箱ではなく丼に盛り付けるのが特徴です。
うな重は、ふっくらと焼き上げたウナギの蒲焼きを、甘辛いタレをかけてご飯の上に載せたものです。
私も大好きです。
ウナギのかば焼き
ウナギの蒲焼きには、関東風と関西風の2つのスタイルがあります。それぞれの違いを見てみましょう。
- 背開き vs 腹開き
- 関東風 背開きのうなぎを使います。江戸では侍が多く、背開きは「切腹」を連想させるため採用されたと言われています。また、背開きはうなぎがおとなしくなって裂きやすいとされています。
- 関西風 腹開きのうなぎを使います。商人文化の町である関西では、「腹を割って話す」ということから腹開きになったとされています。
- 蒸す vs 蒸さない
- 関東風: 白焼き(素焼き)にしたうなぎを蒸し、タレを付けて再び焼いて仕上げます。江戸っ子はせっかちな人が多く、焼いて蒸した状態で置いておき、注文が入ってからタレを付けて再び焼いて提供効率を上げたと言われています。
- 関西風: 蒸す工程がなく、最初から最後まで焼いて仕上げます。また、関西風では焼きの技術でうなぎを柔らかくすることに重点が置かれています。
どちらのスタイルも美味しいですが、好みに合わせて楽しんでいただければと思います。
ウナギの白焼き
白焼きは、うなぎ本来の味を楽しめる通な食べ方です。
うなぎの美味しさを堪能したい方にはおすすめです。
ウナギの白焼きとは、ウナギに調味料やたれを加えずにそのまま焼いたものです。
「しらやき」として親しまれています。
うなぎに調味料やたれを加えずに直接焼いたものが白焼きです。
素焼きにすると白い身の状態で仕上がることから、白焼きといわれるようになりました。
たれでごまかしがきかない分、うなぎ本来のうま味を味わえる食べ方として愛されています。
ウナギは産地や養殖された地域によって味が変わるそうです。
水や餌、養殖方法が異なるからです。
繊細ですね。
味の違いがよりはっきり実感できるため、美味しい白焼きは素材に自信がある証拠といえるでしょう。
というわけで、白焼きはウナギそのものの味を味わいたい方におすすめです。
塩、ワサビ、ワサビ醤油などでいただきます。
さっぱり食べられるのでお酒のお供にもぴったりです。
肝料理(肝焼き・肝串・肝吸いなど)
うなぎの肝とは胃を中心としたうなぎの内臓のことを指します。
肝特有の苦味が特徴ですが、味はそれほど濃くありません。
上質な脂肪分があり、特有のやわらかい食感もうなぎの肝の魅力の一つです。
うなぎの肝は絶対に生食してはいけませんから気を付けましょう。
生食すると、うなぎの血に含まれる神経毒(イクチオヘモトキシン)によって食中毒を引き起こす可能性があるからです。
ふぐの毒は有名ですが、ウナギにも毒があります。
含まれているのは「血液」です。
調理中に皮膚についてしまったら、必ずすぐに洗いましょう。
また、肝はビタミンAを豊富に含んでいるため、食べすぎないようにも注意が必要です。
ビタミンA は脂溶性ビタミンですので、体に蓄積されていきます。
ウナギの肝は約10gで、ビタミンAが1日あたりの推奨量に達するとされています。
過剰摂取すると中毒を引き起こす可能性があります。
しっかり加熱した肝に味をつけた肝焼きや肝串
家庭で作れる簡単ウナギレシピ
ウナギを生からおいしく仕上げるのは、一般家庭では難しいと思います。
惣菜で売られているかば焼きや、ネットで購入したかば焼きなどを温めてうな重やうな丼にしていただくのが一般的ですね。
それに少しだけ手を加えて、おいしくいただく方法をお伝えします。
う巻き
う巻きは、ウナギの蒲焼きを卵で巻いたものです。
お魚が苦手なお子さんも食べやすく、華やかですね。
かば焼きが一人前しか残っていない時でも、少量でみんなで食べられますから、おススメです。
ちらし寿司
こちらも簡単です。
細かく切ったウナギを、普通のちらし寿司飯に混ぜる、あるいは上に乗せるだけで、高級感あふれるちらし寿司の出来上がり。
寿司飯の上に、細かく切ったウナギの蒲焼きと錦糸卵、きゅうりや大葉などを載せるだけで完成します。
ひつまぶし
ウナギの専門店にあるメニューです。
名古屋名物のウナギ料理で、ウナギの蒲焼きを細かく切り、ご飯と混ぜて食べるものです。
「ひつまぶし」は今や全国的に広まった料理ですが、実は愛知県名古屋市の熱田神宮前の「あつた蓬莱軒」の登録商標です。
ですので、由来はといえば「あつた蓬莱軒がはじまり」と言っていいと思います。
うなぎの蒲焼をふんだんに使い、ご飯には特製のタレが染みこんで、名古屋名物にふさわしい料理です。
チンしただけのウナギでも、細かく切って混ぜるとひつまぶしになるのですから、ご家庭でもできそうですよね。
もちろん名店の味にはかないませんが。
ウナ茶漬け(うなぎ茶漬け)
ウナギ茶漬けは、その名前だけでも食欲をそそる一品です。
日本の伝統的料理で、うなぎの蒲焼を乗せたご飯にお茶や出汁をかけていただく料理です。
このシンプルな調理法が特徴で、素朴でありながらも奥深い味わいが楽しめます。
江戸時代から庶民の間で親しまれてきました。
当時、うなぎは栄養価が高く、疲労回復に役立つ食材としても重宝されていました。
そのため、簡単に調理できるうなぎ茶漬けは忙しい人々にとって理想的な料理だったようです。
うなぎ茶漬けを作る際の基本的な手順は以下の通りです。
- うなぎの蒲焼きを温めて切る。
- ご飯を茶碗に盛り、切ったうなぎを乗せる。
- 熱いお茶やだし汁をかける。
- わさびや刻み海苔、白ごま、ねぎをトッピングする。
- 塩を加えて味を整え、しばらく置いて味をなじませる。
お茶漬けにする際には、お茶の温度管理が大切です。
熱すぎるとせっかくのうなぎの風味が損なわれてしまいますので、適温(約80度前後)でかけることをおすすめします。
また、お茶の量もご飯の2/3程度がちょうど良いバランスです。
以上のように、さまざまなウナギ料理がありますので、土用の丑の日には是非いろいろなウナギ料理を試してみてください。
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